分かったつもりの備忘録

文字数しばりのない外界へ飛び出しました。▼お叱りお褒め甘やかしはこちらまで gotchagotcha.info@gmail.com

どっかのラブソングだった。ラブソングのぶつかり合いだった。

 

「…んなわけねぇだろっつうの。」

 

アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

ここに触れずには第7話を終えたこの感情をどうにもできなかったので一旦この高まりを発散しました。きっとあの瞬間、日本全国で思考回路がショート寸前になったひとが多発したことだと思う。ほんとにまったくもう、おかげさまで泣きたくなるようなムーンライトすぎる夜を過ごしてしまい、まったく眠れないまま今に至ってしまった。
(参考:ムーンライト伝説 DALI - 歌詞タイム

 

 

先週の放送で、牧と春田の別れ話に部長と春田の同棲と、導火線に火が付いた状態の爆弾を置き土産にされたような気持ちになっていた。その状態で待った一週間は、信じられないくらいに長くて早かった。

6月2日23時15分、待ちに待ったような、まったくもって来てほしくなかったような時間がきた。あんなに真剣にテレビの前にかしこまったのはいつ以来だろう、初めてかもしれない、どうしようもない気持ちでテレビの前で待っていた。おっさんずラブの最終回が始まった。

 

 

始まった最終回は、みんながみんな優しかった。優しすぎた。

 

あんなにも純粋に幸せをかみしめていたはずの部長は、結局「はるたんのため」に身を引いた。「何年お前の上司やってると思ってるんだ」と、何もかものお膳立てまでしてから身を引いた。

挙式中の誓いの言葉で部長がやけに大声だったのは、はるたんの「誓います」という”嘘”が神様に聞こえてしまわないよう、わざと遮った風にさえ思えた。だって、春田はこれまでのモノローグの台詞で、「神様、」と素直な気持ちを話していた。そんな彼が神様に"嘘"をつく声を、部長が掻き消してくれたんじゃないだろうか。

 

ところで春田の上海転勤が決まった後、部長が練習していた中国語は、「ありがとうございますとても助かりました。シャーシャーノン、パンラドゥーマンラ。」。

 中国の標準語での「ありがとうございます」は【シエシエニー】、部長の話す【シャーシャーノン】は、上海の方言だ。

あのシーンの部長は、楽しそうに上海に行く準備をしていた。

はああ…いやもう本当に、みんながみんなに幸せになってほしすぎて何度観たって心が忙しい。幸せになってほしい以外の語彙を失う。

 

一方で武川主任は、春田に牧の本心を匂わせた。完全に、敵に塩を送っていた。

そのうえで牧には、

「お前がそうやっていつまでも春田と向き合わないから、俺はお前を諦めきれない」

「相手の幸せのためなら自分は引いてもいいとか、どっかのラブソングかよ」

「そんな綺麗事じゃねえだろ、恋愛って」

と矢継ぎ早に投げつけた。

こう言って牧の気持ちに発破をかけてくれた武川主任こそ、まるでどっかのラブソングだ。

「俺が牧がいなきゃ駄目なんだ」と膝をついてまで春田に叫んだくせに、風邪で休む牧に何十キロにもなるだろう差し入れ抱えて会いに行ったくせに、春田に発破をかけて、牧にも発破をかけて、全部が結局、自分のことより牧の幸せを祈ったそれだ。

 

そんな部長と武川主任の屋上でのラストシーンでは、ひどく優しくて暖かい会話をして、部長が武川主任にまるで「何かあるかのような」素振りで手を重ねてみせ、それから、明らかに冗談だとわかるように笑っていた。

でも、武川主任は、 セクシャリティのことはオープンにしてないはずだ。

それなのにあんなに和やかに笑い合えること、あのシーンは、本当はすべてに気づいている部長が、どこか一線を引いて生きている武川主任に対して投げた優しさなのかもしれない。これも「何年上司やってると思ってるんだ」ってやつだったりしたら、やっぱり最高に格好良い。

 

 

ちずちゃんはちずちゃんで、「あのさ、もういい加減、ちゃんと応援させてよ。」と春田に話した。1年前とはいえ告白してきた相手に、結婚の相談をして、悩んだ様子でぐだついて、本来ならほんとマジデリカシー春田1000000%だ。

でもちずちゃんはそのうえで、牧に優しい言葉をかけに行ってくれた。

 

ちずちゃんが「つらいんでしょ」と牧に言ってくれた。

ちずちゃんが、「私は、つらかったよ」と言ってくれた。

だから、あの牧が「つれえ。」と言ってくれた。

そのあと川に向かって叫ぶ牧の笑顔は、この7話で一番すっきりした明るい笑顔だった。

もうこのあたりは画面が曇って見えなかった。声を挙げて泣いてしまってなんならちょっとセリフ聞こえなかった危なかった。もう滝のように涙が流れた。だって、春田さんに強い言葉だけを投げつけて本音を隠して離れた牧が、全力でただただ本音をぶつけて心が軽くなったかのように笑顔になっていた。

好きだから別れた、と即答した牧の「本当に好きな人には幸せになってもらいたい」には、強さも弱さもパンパンに詰まってたと思う。

「春田さんに幸せになってほしい」と本気で思える強さと、自分が相手ではそうならないと思ってしまっている弱さ、そして、だから傷つく前にと自分から傷つけ傷つきにいってしまった弱さ、そういうものを一旦何もかも抜きにして叫んでいるように見えたあのシーンは、本当に本当に、ただただ素敵だった。

 

 

最終話が始まってすぐ、「気晴らしに合コンに行って寝坊した」春田が遅刻でオフィスに駆け込んだ朝、頭を下げる春田に注目していたオフィスのメンバーは数秒ですっと視線を戻した。

でも牧だけは、最後までひとり振り返って春田を見つめていた。何かを思う顔をして、一番長く後ろを向いていた。

そして、ほんの一瞬しか映らなかったけれど、その牧を、武川主任がそっと見ていた。

でも、春田は目を伏せていた。一人では朝起きることもできない春田が、「気付いたら、こんな、時間で」と所在なげにしていた。

あのときのオフィスには、たくさんの矢印が、ひとつも向き合うことなく宙に浮いていた。

まるで「どっかのラブソング」が大音量で響いているみたいだった。

 

 

部長も主任もちずも牧も、「自分の想いの成就だけでは幸せとは呼べない」「相手の幸せが自分の幸せ」「相手のためなら自分は引く」、そんな臆病で優しすぎる恋の集まりだった。見事なまでに「どっかのラブソング」だった。

春田を除いて。

 

春田だけは、「そんな優しすぎる想いをどれひとつ無下にできない」、真っ直ぐすぎる優しさの持ち主だった。

だから、その実直な優しさだけだけを握りしめて、ぶつかり合ったみんなのラブソングを全部抱えて、みんなの「誰かの幸せを願った想い」を全部全部背負って、誰の優しさも誰の想いも無駄にしないよう、「俺の幸せを勝手に決めるな」と、最後の最後にド級にまっすぐな言葉を投げてくれた。最高に、最高のヒーローだった。

でもそれは、優しさじゃなくててただのお人好しでただの弱さで、勇気の足りない部分でもあった。

 

その春田が、牧の名前を何度も呼んで、飾らない言葉を全力で叫んで、ボロボロの服装でドタバタと走ってジタバタと抱き締めて、ぽんこつな素のままの春田を真っ直ぐに牧に向けていた。

春田の「結婚してください」に、牧が返した言葉は泣きながらの「ただいま」だった。

牧は、春田のところに帰ってきた。出かけていた先から、帰ってきた。牧にとって、彼の心が「さよなら」をして春田から本当に離れた時間なんて無かったんだと思った。

 

 

他にも、この物語を見届けたみんなと話したことがいっぱいいっぱいある。

すぐ課金しちゃうマイマイめっちゃわかるわたしたちヲタクはそうやって生きてるよねとか蝶子さんめっちゃわかる年下からはあえてさん付けのままのほうがグッと萌えるたまに出るタメ語こそ至高ですよねとか「できるだけまわりませんか」って牧くんちょっとでも一緒にいたかったんじゃないのうわあああああそのシーンからの武川主任本当にもうつらい胸が痛いところで春田ほんと足長いイイ身体してるタキシードダッシュのシーン頭身が良すぎて逆に気が散ります好きです、とか。

あと、上海へ発つ前の春田の挨拶が「少しでも多くのことをこの営業所に持って帰ってこれるように精一杯頑張ってきます」だったことは、制作側の皆さまがわたしたち視聴者へ投げてくださった最高の優しさだと受け取ってる。だって春田が完全転勤じゃなくて帰ってくるんだよプロジェクトを終えたら帰ってくるのがわかってる挨拶なんだよ良かった永遠に離れ離れの牧と春田なんて居なかった本当にありがとうございます!!!!!!!!!!!!

 

これからまたたくさん見返して、その都度まわりのみんなとこうして共有したくなるんだと思う。だって!いろいろ発売もされますし!!!!!!(ちなみにBlu-ray BOXクレジット決済にて早速課金完了しました発売本当におめでとうございますありがとうございますありがとうございます。)

取り急ぎ我々には、「ハルタを下の名前だと思い込んでいたマロがこれまで"ハルタさん"と呼んでいる様子ヒストリー」を第1話から確認するミッションが課されている。マジかよマロ。逆に下の名前だと思ってたのに「ハルタさん!」って気軽に呼べるそのポップさこそジェラるわ。

 

おっさんずラブにはジェットコースターのようにたくさんの感情を体感させてもらって、話し始めたら止まらないけれど、わたしの今日が終わらないうちに、絶対に文字に起こして残しておきたい一番の気持ちははっきりしている。

春田さんと牧に、ハッピーエンドが来て本当に良かった。

 

フラッシュモブでプロポーズを受けたときの春田の服は、すっかりダサい中学生春田に戻っていた。

牧が戻ってきた家で荷造りをする春田はスーツだったけれど、あの時じゃれ合って投げ合った服たちが、これからまた牧のセンスでおしゃれになっていくのかもしれない。

ふたりで紡いでいく日が、1年の空白のおかげで育っていく部分もあるのかもしれない。

部長と暮らして「自分のことを自分でできるようになった」春田が、もしかしたら牧と一緒に冷蔵庫を覗く日が来るかもしれない。

その時に、「牧のメモが出てきた日があった」と話をしてみてほしいなんて思う。

だって、きっと、冷蔵庫に入ったままだったあのメモを、部長が見つけなかったはずがない。あのメモは、同じく純粋に春田を想う部長には捨てられなかった、牧の想いの欠片みたいだった。

それが、奇跡みたいなタイミングで春田の手元に舞い落ちたことを、照れながらでも良いから牧に話してほしい。

そしたらきっと、次の日の牧は美味しいカレーを作ってくれそうな気がしちゃう。

そしたら今度は、本当はあの日公園で、2時間ずっと待ってたことも話してみてほしい。

まるでよくできたドラマみたいに入れ違ってしまっていたことを知って、笑ったりちょっと泣いたりしていてほしい。

可能ならば、そんなふたりをこれからも観たい。

 

ほんの数日前にこんな感想記事を書いたけれど、「創一」と呼びかける牧の姿をまだ見ていない。

最後のシーンではお互いに「牧」とも「春田さん」とも呼ばなかった。

そんなふたりがきらっきらのひだまりの中であんな幸せそうにじゃれ合う姿を見せられたら、2週間だけのはずだったわたしの彼らへの恋が、延長戦を望んでしまう。

 

誰のことも不幸にはしなかった最高のラブストーリーに、続きがあってほしいです。

天空不動産とわんだほうのみんなと、また笑って泣いてクッションを抱きしめながらじたばたする土曜の夜を過ごしたいです。

本当に本当にありがとうございました。

たくさんのラブソングが詰まった、最高に優しいラブストーリーでした。

 

(追伸)

最後にひとつだけ、どうしても言わなきゃと思ったことを聞いてください。

今日まで、「牧春最高」「牧春尊い」「牧春に幸せになってほしい」、なんて言っててごめんなさい。

 

ラスト1分、わたしの中で「牧春牧」に答えは出せなかったです。